吸血鬼人名録

ヴァンパイア

著名な吸血鬼、ヴァンパイアの人名録です。
架空の人物はもとより実在でも吸血鬼と言われたり、またはそれらに関連した人物も取り上げています。
吸血鬼やそれに類するキャラクターの名付けの参考になれば幸いです。

目次(クリックで開閉)
  1. アルカード
  2. アルノルト・パウル
  3. ヴラド3世
  4. オルロック
  5. カーミラ
  6. カイン
  7. クリストファー・リー
  8. ジョン・ジョージ・ヘイグ
  9. ジル・ド・レイ
  10. セラーナ
  11. ドラキュラ
  12. バートリ・エルジェーベト
  13. フランシス・ヴァーニー
  14. フリッツ・ハールマン
  15. マーカラ
  16. ミラーカ

菊地秀行のSFバトル小説「吸血鬼ハンターD」の主人公。
本名は不明。
正確には吸血鬼ではなく、人間との混血であるダンピールである。
黄昏の地球で衰退しつつもなお強大な吸血鬼貴族を狩る吸血鬼ハンターで、トラベラーズハット、長刀、胸元のペンダントがトレードマークの絶世の美青年。
同作の「退廃してなお強大な闇の貴族」としての吸血鬼のイメージは以降の国内外の創作作品に大きな影響を与えている。

アルカード

アーカードとも。
アルカード(Alucard)はドラキュラ(Dracula)のアナグラムであり、偽名として用いた。
または作品によってはドラキュラとは別人の息子などの親族の名前とされる事もある。

アルノルト・パウル

18世紀前半のセルビアの実在の人物。
元は兵士だった彼は戦場で吸血鬼に襲われたと考え、吸血鬼の墓の土を食べるなどしてそれを祓ったという。
その後、故郷の村へ帰還するが干し草を運ぶ荷車に押しつぶされる事故で亡くなってしまう。
その死から約一か月後に隣人や家畜などが襲われて死者が出たり血を吸われる事件が起き始めたことから、村人たちはそれを吸血鬼と化したパウルの仕業だと考え、彼の墓を掘り起こした。
すると遺体は腐敗がほとんど進まず爪も伸び、棺には血糊もついていたという。
それを見た村人たちは伝承に従い身体に杭を打ち付けたところ、まるで生きている人間かのようにうめき声をあげ、大量に出血したという。
この一連の出来事は1746年にベネディクト会修道士にして聖書学者であったドン・オーギュスタン・カルメによって著述された「天使、悪魔、霊の出現、およびハンガリー、ボヘミア、モラビア、シレジアの亡霊・吸血鬼についての論考」によって紹介され、これは具体的に記録が残る最初期の吸血鬼事件とされている。
カルメは著作の中で各現象について出来る限り当時の科学的知見に基づいて検証しており、これはまだ超自然的オカルト的な偏見の強かった当時としては画期的であった。

ヴラド3世

15世紀の東欧ワラキア公国の君主でドラキュラのモデルの一人の実在の人物。
在地貴族の力が強かったワラキアを苛烈な手法でまとめ上げ、小国ながら伸張するオスマン帝国に対抗して激戦を繰り広げた。
後に十字軍結成への意見の相違からハンガリー王に幽閉される事になり、その際に人を無差別に殺害し血肉を食らったという濡れ衣を着せられ、それがキリスト教圏に広まった事がドラキュラのイメージを生み出す要素の一つとなる。
ヴラド・ツェペシュと呼ばれる事もあるが、ツェペシュは串刺しにする者、串刺し公の意味の異名であり本名ではない。

オルロック

オルロック伯爵。
ヴァンパイアを扱った最初のホラー映画といわれる「吸血鬼ノスフェラトゥ」に登場する吸血鬼。
「吸血鬼ドラキュラ」の版権を得られなかったために設定され、そのためにドラキュラに酷似したキャラクターになっている。
映画はその後著作権侵害として訴えられて配給停止の憂き目に遭っている。

カーミラ

シェリダン・レ・ファニュによる怪奇小説「カーミラ」に登場する吸血鬼。
ただし作品内においては推測などで暗示的に示されているだけで、カーミラが吸血鬼であると断言されているわけではない。
同作は知名度においてはドラキュラにかなり後塵を拝するが、作られた時期はこちらが先で多大な影響を与えている。

カイン

聖書に登場するアダムとイブの息子兄弟の兄で、弟はアベル。
嫉妬に駆られて弟のアベルを殺害したことにより人類最初の殺人者となる。
それにより神によってエデンから追放され、罪人である印(カインの刻印とも呼ばれる)を背負わされたという。
この印を呪いであると解釈し、人類最初の吸血鬼となったとも言われる。
ただし一般的にはカインは荒野で子孫を残しており、遊牧民の祖とされる。

クリストファー・リー

本名はクリストファー・フランク・カランディーニ・リー。
20世紀から21世紀にかけての映画俳優。
第二次大戦後のホラー黄金期に当代一のドラキュラ俳優として一世を風靡し、90歳を越える最晩年に至るまで大作を含む数多の作品に出演し続けて「生ける伝説」とまで言われた名優の中の名優。
当然吸血鬼ではないが、容姿をモデルとしたり名前が吸血鬼として用いられる事がある。

ジョン・ジョージ・ヘイグ

20世紀前半のイギリスの実在の連続殺人鬼。
1940年代後半に6人または9人を殺害し被害者の血を飲んだと供述したことから"ロンドンの吸血鬼"と言われた。
しかしこの告白は精神異常を装う嘘で、主な目的はあくまで金銭であったとされている。

ジル・ド・レイ

15世紀前半、英仏百年戦争時代のフランス貴族にして軍人。
実在の人物。
本名はジル・ド・モンモランシ=ラヴァル。
ジャンヌ・ダルクに協力し、イングランド軍を押し返す事に成功して救国の英雄の一人となる。
しかしジャンヌの処刑後は荒み、領地に引き篭もって放蕩生活に浸り、その中で数百人から千人を越える少年を拉致し拷問や陵辱後に殺害したとされる。
その後それらの行いが露見して処刑されるに至り、後世の創作物では吸血鬼であるとされる事もある。

セラーナ

ゲームThe Elder Scrolls Ⅴ:SkyrimのDLCに登場する女性吸血鬼。
他の吸血鬼によって感染したのではなく、儀式によって吸血鬼化したいわゆる真祖的な存在の一人。
とある理由により数千年間封印されていた所を主人公によって解放され、行動を共にするようになる。
大人の女性と少女の間を行き来するような不思議な魅力を持ち、ヒロイン的な存在の不在だった同ゲームの事実上のヒロイン。

ドラキュラ

ブラム・ストーカーの小説「吸血鬼ドラキュラ」に登場する吸血鬼の代名詞の人物。
日本においてはしばしばドラキュラ自体が吸血鬼と言う意味で用いられる事があるが、個人名であり誤用である。
整った容姿に長身オールバックで夜会服とマントに身を包んだ紳士のイメージは20世紀後半の映画の影響も大きい。
ドラキュラとはドラクル(竜)の息子の意味で、本来的には異名である。
伯爵とされる事もあるが、少なくとも原作においては自らそう名乗った事はない。

バートリ・エルジェーベト

"血の伯爵夫人"とも呼ばれる吸血鬼伝説を持つ16世紀から17世紀のトランシルヴァニア公国の実在の貴族。
ハンガリー貴族ナーダシュディ・フェレンツの元に嫁ぐ。
数ヶ国語を操り戦争で不在がちな夫の代わりに自ら領地を管理する聡明な女性であったが、同時に自らの美貌を保つ事に異常に執着した。
夫の死後、処女の血を浴びる事で若さを保つ事ができると考えるに至り、農奴の娘を誘拐したり下級貴族の娘を誘い出すなどして数百人を拷問、惨殺していたとされ後に幽閉される。
先立った夫のナーダシュディも有能だが非常に残虐な軍人だったため、拷問などは夫に教え込まれ一連の行為は生前から行われていた可能性も指摘されている。
「カーミラ」のモデルともされている。

フランシス・ヴァーニー

1845年から連載された「吸血鬼ヴァーニーまたは血の饗宴」の主人公。
通称ヴァーニー卿。
王家を裏切ったオリバー・クムロウェルによって呪われて吸血鬼化したという。
ヴァーニー卿の人物像が作品の中で定まっていない、時代設定も矛盾しているなど物語には混乱が生じているが、鋭い牙を生やし女性の首に噛みついて血を吸うなど最初期の吸血鬼作品として後世の吸血鬼像に大きな影響を与える設定がちりばめられている。
ブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」も本作に大いに影響を受けたと考えられている。

フリッツ・ハールマン

19世紀後半から20世紀前半のドイツの実在の連続殺人者。
幼いころから家庭の内外に種々の問題を抱えて育つが、第一次世界大戦後に警察の情報提供者兼闇市の顔役にのし上がる。
同性愛者であり、この頃に立場を利用して浮浪少年や年若い男性浮浪者などを誘い込み、行為の最中に喉をかみ切って殺害していった。
1919年から1924年にかけて少なくとも24人、ハールマン本人の供述によれば48人が殺害されたという。
まだ連続殺人鬼(シリアルキラー)と言う言葉がなかったため、マスコミには「吸血鬼」とも称された。

マーカラ

マーカラ(Mircalla)はカーミラ(Carmilla)のアナグラムで、作中で彼女が名乗ったとされる名前の一つ。
ドラキュラに対するアルカードもこれを参考に生まれたと言われている。

ミラーカ

マーカラと同じくカーミラが名乗った名前の一つとされる。
ミラーカ(Millarca)。